この記事でお伝えしたいこと
- 長時間の施術だから丁寧で良い、と当院では考えていません。
- 私自身も以前は長時間施術を重視していましたが、90分施術への疑問とその後の学び・臨床経験を通して考え方が変わりました。
- 現在は施術時間そのものより、「その方に今どれくらいの刺激が必要なのか」を考えることを大切にしています。
はじめに
「30分より60分、60分より90分の方が、しっかり施術してもらえる気がする」
「せっかく整体を受けるなら、長くやってもらった方が丁寧なのでは?」
このように感じる方もいらっしゃると思います。
実は、私自身も以前はそう考えていました。
修業時代から「長時間施術の方が、患者さんにしっかり向き合える」「時間をかけることが丁寧な施術につながる」と考えており、2008年の開業当初には45分コースと90分コースを設けていました。
しかし現在の当院では、「長く施術すること」自体を施術の価値とは考えていません。
これは最初から持っていた考え方ではなく、実際に施術を続ける中で疑問を持ち、さまざまなことを学び、その後の臨床経験を重ねる中で少しずつ変わってきたものです。
今回は、なぜ私が施術時間そのものよりも「その方に今どれくらいの刺激が必要なのか」を大切にするようになったのかについてお伝えします。
私自身も「長時間施術の方が良い」と考えていました
開業当初の私は、施術時間を一つの価値として考えていました。
45分の施術より90分の施術の方が、より細かく身体を見ることができる。
時間をかけてさまざまな場所を施術した方が、患者さんにも満足していただける。
そして何より、自分自身も「これだけしっかり施術したのだから」という感覚を持ちやすかったように思います。
そのため、当時は45分と90分という時間を基準に施術コースを作っていました。
もちろん、手を抜いていたわけでも、時間だけを見ていたわけでもありません。
その時の私は本当に、
「患者さんのためには、できるだけ時間をかけて丁寧に施術した方が良い」
と考えていたのです。
しかし、開業から5年ほど経った頃から、その考え方に少しずつ疑問を持つようになりました。
90分施術を続ける中で生まれた疑問
きっかけは、90分の施術を受けていただいている患者さんの中に、思うような経過が得られていないケースがあったことでした。
時間をかけて施術している。
自分としても、できることをたくさん行っている。
それなのに、なぜ期待していたような結果にならないのだろう。
当時の私は、さまざまな技術や考え方を学ぶため、多くのセミナーへ参加していました。
そこで、この疑問を複数の講師に相談しました。
すると、講師は違っても、繰り返し教えられたのは似たような考え方でした。
「最低限の刺激で、できるだけ良い反応を引き出すことを考える」
「刺激は多ければ多いほど良いわけではない」
「長時間施術そのものを価値にしない」
そして、その中で何度も耳にした言葉の一つが、
「Less is more」
という考え方でした。
少ないことが、そのまま良いという意味ではありません。
私自身は、
「必要以上に何かを加えるのではなく、その方に必要な刺激を見極める」
という意味で受け取るようになりました。
この学びをきっかけに、自分がそれまで行っていた施術を改めて見直すようになり、その後の臨床経験を通して、施術時間に対する考え方も少しずつ変わっていきました。
施術者が患者さんを「治している」という考え方には違和感があります
施術時間に対する考え方が変わる中で、もう一つ大きく変わったのが、
「施術者は患者さんの身体に対して、何をしているのか」
という考え方です。
私は現在、自分が患者さんを「治している」という考え方には違和感があります。
人間の身体には、傷を修復したり、体内の状態を一定に保とうとしたり、外から加わった変化に適応したりするさまざまな働きがあります。
施術者が、その働きそのものを代わりに行うことはできません。
私たちができるのは、身体の状態を確認し、必要と考える刺激を加えながら、その方自身の身体が持っている働きが発揮されやすい状態をつくるためのお手伝いをすることだと考えています。
身体そのものが持つ働きを大切にするという考え方については、「痛みより睡眠を重視する理由」でも詳しくお伝えしています。
だからこそ、
「施術者がたくさん手を加えれば、その分だけ身体は良くなる」
とは考えていません。
施術で何かをすることも大切ですが、ときには「これ以上刺激を加えない」と判断することも、同じように大切だと考えています。
刺激は、多ければ多いほど良いとは考えていません
現在の私が施術を行う際に大切にしている考え方の一つが、
「最低限の刺激で、できるだけ良い反応を引き出す」
というものです。
これは、「強い刺激は悪い」「長時間の施術は身体に悪い」という意味ではありません。
患者さんの状態によって、必要と考える刺激の強さも内容も異なります。
当院が一つの要素だけで施術判断をしない理由については、「症状の原因は1つじゃない」でもご紹介しています。
ただ私は、
「10の刺激を加えたら5より良い」
「30分より60分、60分より90分刺激を加えた方が良い」
という単純な足し算では考えていません。
身体は刺激をただ受け続けるだけの物体ではなく、加わった刺激に対してさまざまに反応します。
だからこそ施術中も、
「まだ何かできることはないか」
だけではなく、
「ここまでで十分ではないか」
という視点を持つようにしています。
以前の私は、時間が残っていると「もう少し何かやった方が良いのでは」と考えることもありました。
現在はむしろ、
「今この方に必要な刺激はどこまでなのか」
を考えることの方が、施術時間そのものより重要だと考えています。
現在30分枠なのは「30分施術が最適だから」ではありません
現在、当院では30分を1枠としてご予約をお取りしています。
ただし、これは
「30分間ずっと身体に刺激を入れ続ける」
という意味ではありません。
30分という予約枠の中で、
- 現在の状態の確認
- 必要な検査
- 施術
- 施術後の反応確認
- 必要な説明
などを行っています。
その日の状態によって、重点的に確認する場所や施術内容が変わることもあります。
痛みを感じる場所だけに刺激を加えるとは限らない理由については、「腰痛は痛い場所だけ施術すれば良い?当院が施術判断で見ているポイント」でも詳しく解説しています。
そして、必要と判断した施術が終わっているのであれば、
「まだ時間が残っているから」
という理由だけで刺激を追加することはしません。
一方で、短時間で終われば良いという話でもありません。
施術時間を短くすること自体が目的なのではなく、
「必要なことを、必要なだけ行うこと」
が目的だからです。
そのため当院では、何分施術したかよりも、
「その方のその日の状態に対して、何をどこまで行う必要があるのか」
を考えることを大切にしています。
まとめ ~施術時間より「何が必要か」を大切にしています~
私自身、以前は「長時間施術の方が丁寧で、患者さんにとって良い」と考えていました。
実際に開業当初は45分・90分というコースを設け、時間をかけて施術することにも価値があると考えていました。
しかし、90分施術を続ける中で思うような経過が得られないケースに疑問を持ち、複数の講師から刺激量についての考え方を学び、その後の臨床を重ねる中で、私自身の考え方は変わっていきました。
現在大切にしているのは、
「長く施術すること」
でも、
「できるだけ短く終わらせること」
でもありません。
その方の身体を確認し、
「今、何が必要なのか」
「どこまで刺激を加える必要があるのか」
を考えながら、必要なことを必要なだけ行うことです。
施術者が患者さんの身体を一方的に「治す」のではなく、その方自身の身体が持っている働きを尊重しながら、必要な介入を考える。
それが、約20年の臨床を通して現在の私が施術時間以上に大切にしていることです。
文責及び施術担当者:アルテカイロプラクティック院長 前田彰(院長プロフィールはこちら)
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