この記事でお伝えしたいこと
- 一瞬だけ出た痛みを、それだけですぐに「悪化」と判断する必要はありません
- 当院では、痛みの強さだけでなく「頻度・持続時間・経時変化」を確認しています
- 小さな痛みに一喜一憂しすぎず、数週間・数か月で全体としてどう変わっているかを見ることも大切です
はじめに
「昨日、一瞬だけ肩が痛かった」
「朝、少しだけ腰がズキッとした」
施術を続けている患者さんから、このような身体の変化について「また悪くなったのでしょうか?」と相談されることがあります。
ちゃんと良くなりたい、できれば元のつらい状態には戻りたくない。そう思っているほど、小さな痛みでも気になるのは自然なことだと思います。
ただ、当院では「一瞬痛かった」という一つの出来事だけを取り出して、それをそのまま悪化とは判断していません。
私がむしろ重視しているのは、その痛みがどのくらい続いたのか、何度くらい繰り返しているのか、その後どのように変化しているのかという「痛みの続き方」です。
今回は、なぜ当院が一瞬の痛みに過剰反応せず、「続く痛み」を重視して経過を見ているのかについてお話しします。
「この前、左肩が痛かったんです」——詳しく聞くと一瞬だけだった
実際の臨床でも、こうしたことはよくあります。
たとえば1週間ぶりに来院された患者さんから、
「先生、この前また左肩が痛かったんです」
と少し心配そうに言われることがあります。
そこで、
「いつ痛かったんですか?」
「どのくらい続きましたか?」
「その後も何度かありましたか?」
と詳しく聞いていきます。
すると、
「その週のある朝、一瞬だけです。その後は特に痛くありませんでした」
ということがあります。
患者さんとしては、その一瞬の痛みがとても気になり、
「また悪い方向へ戻ったのでは?」
と不安になっていたわけです。
もちろん、一度だけだから何も確認しなくていいということではありません。
ただ私は、このような「一度だけ・短時間だけ出て、その後は続いていない痛み」を、それだけで身体が悪化したサインとは判断していません。
「痛みが出た」という事実だけでなく、「どのような出方をして、その後どうなったのか」まで確認することが大切だと考えているからです。
私が一瞬だけの痛みに、あえて過剰反応しない理由
誤解を恐れずに言えば、私は一瞬だけ出た痛みに対して、あえて過剰反応しないようにしています。
私たちは毎日、立ったり座ったり、歩いたり、物を持ったりしながら生活しています。
仕事が忙しい日もあれば、いつもより長く歩く日もあります。寝方が少し違うこともあれば、普段あまりしない動きをすることもあります。
そうして身体を使って生活している以上、何らかの負担や刺激に対して、一時的に「あ、痛い」と感じることまで完全になくすことを、身体の良い状態の条件にする必要はないと私は考えています。
痛みは身体から送られてくる情報の一つでもあります。
だから痛みを無視するわけでも、我慢すればいいと考えているわけでもありません。
大切なのは、一瞬痛みが出たという事実だけで、
「また悪くなった」
「元の状態に戻った」
「今までやってきたことが無駄になった」
と、そこまで意味を大きくしすぎないことです。
一瞬の痛みを軽視するのではなく、その痛みにどの程度の意味を持たせるべきなのかを見る。
これも、当院が経過を確認するときに大切にしている考え方の一つです。
本当に私が注意しているのは「続く痛み」
では、どのような痛みならより注意して見るのか。
私が重視しているのは、
- 痛みがなかなか取れない
- 1日に何度も繰り返す
- 日をまたいで続いている
- 長期間続いている
- 徐々に痛みが強くなっている
- 痛みによって日常生活への支障が増えている
といった「続く痛み」です。
つまり、単純に「痛かったか、痛くなかったか」だけを見ているわけではありません。
どのくらいの頻度で出ているのか。
一度出ると、どのくらい続くのか。
昨日より今日、先週より今週と、時間の経過とともにどう変化しているのか。
私はこうした「頻度・持続時間・経時変化」を施術判断の材料にしています。
同じ「肩が痛かった」という話でも、
「朝、一瞬だけ痛かったけれど、その後は何ともない」
のと、
「ここ数日、1日に何度も痛みが出て、だんだん強くなっている」
のとでは、受け止め方は当然変わります。
なお、今回お伝えしている考え方は、どんな痛みに対しても「気にしなくていい」という意味ではありません。
強い痛みが続く、繰り返し悪化している、生活に大きな支障が出ている、明らかな外傷後に痛みが出た、神経症状や全身症状を伴うといった場合には、必要に応じて医療機関での確認を優先することも大切です。
だからこそ、「痛みがある」という一点だけではなく、その出方と続き方を見ることが重要なのです。
痛みの「続き方」だけでなく、「痛む場所が変わった」という変化についても、それだけですぐ悪化とは判断していません。痛みが移動したときに当院がどのように経過を見ているかは、「痛みが移動するのは悪化?当院の判断基準」でも詳しくお伝えしています。
真面目に取り組んでいる方ほど、小さな痛みまで抱え込んでしまうことがある
約20年臨床をしてきて感じるのですが、小さな身体の変化まで丁寧に報告してくださる方は、施術に対してとても真面目に取り組んでいる方が少なくありません。
「ちゃんと良くなりたい」
「できるだけ悪化させたくない」
「先生に言われたことをしっかりやりたい」
そう思っているからこそ、一瞬の痛みにも敏感になります。
ですから私は、そういう患者さんに対して「そんなに気にしなくていいですよ」と突き放したいわけではありません。
むしろ逆です。
真面目に身体と向き合っているからこそ、一回の小さな痛みまで「また悪くなったサイン」として抱え込み、自分自身を必要以上に苦しめないでほしいと思っています。
臨床を続けていると、小さな痛みの変化をすべて悪化と受け止めることで、そのたびに不安になり、痛みへの警戒がなかなか抜けなくなってしまう方を見ることがあります。
痛みへの注意や不安、警戒が強くなると、それ自体がご本人にとって大きな負担になることもあります。
だからこそ、痛みが出たらきちんと確認する。
でも、一度出ただけで全部を悪い方向へ解釈しない。
そのくらいの距離感で身体の変化を見ることも大切だと私は考えています。
痛みの経過を「模試」に例えてお話しすることがあります
患者さんにこうした話をするとき、私は受験と模試を例にすることがあります。
受験で最終的に目指しているのは、志望校に合格することです。
その途中で受ける模試も、もちろん大切です。
模試の結果が悪ければ、
「今回は何が良くなかったのか」
「次に向けて何を変えればいいのか」
を振り返る材料になります。
でも、一度模試の結果が悪かったからといって、
「もう全部ダメだ」
「今まで勉強してきたことは無駄だった」
と考えて、その後の努力まで止めてしまったらどうでしょうか。
それでは、かえって最終目標から遠ざかってしまいます。
身体の経過を見るときにも、これと似たところがあると私は考えています。
一時的に痛みが出たのであれば、
「何をした後だっただろう?」
「少し負担が重なっていなかっただろうか?」
「最近、いつもと違う生活をしていなかっただろうか?」
と振り返る材料にすればいい。
その情報は、決して無駄ではありません。
ただ、一度だけ痛みが出たことを理由に、
「また元に戻ってしまった」
「施術してきたことが無駄だった」
「ここからまた悪くなるに違いない」
と、それまでの経過すべてを否定する必要もありません。
途中経過はきちんと見る。
必要なら修正する。
でも、一回の結果だけで最終的な評価を決めない。
私は身体の経過についても、このような視点を大切にしています。
まとめ 「一瞬痛かったか」だけでなく、全体としてどう変わっているか
私が施術を通して目指しているのは、最終的に痛みの少ない状態をしっかり安定させていくことです。
そのためには、途中で起きた身体の変化を確認することも必要です。
一瞬の痛みであっても、
「何をしたときに出たのか」
「何か負担が重なっていなかったか」
と振り返ることで、今後の身体の使い方や施術を考える材料になることがあります。
一方で、一瞬痛みが出るたびに、
「悪化した」
「元に戻った」
と判断してしまう必要もありません。
大切なのは、一回の痛みだけを切り取るのではなく、
「その痛みは続いているのか」
「繰り返しているのか」
「以前より強くなっているのか」
そして、
「この数週間、数か月で全体としてどう変わってきているのか」
を見ることです。
また当院では、施術後の経過を痛みの強さだけで判断しているわけではありません。なぜ睡眠も大切な判断材料にしているのかについては、「痛みより睡眠を重視する理由」で詳しくお伝えしています。
必要な痛みにはきちんと目を向ける。
でも、すべての痛みを悪者にして、一回出るたびに悪化と判断しない。
「今日、一瞬痛かったか」だけではなく、「全体としてどこへ向かっているのか」。
私はその経過を患者さんと一緒に見ていくことを大切にしています。
文責及び施術担当者:アルテカイロプラクティック院長 前田彰(院長プロフィールはこちら)
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