セルフケアは必要?施術を受けていれば何もしなくていい?

この記事でお伝えしたいこと

  • セルフケアは基本的にはやった方が良いですが、全員に同じものが必要なわけではありません
  • 身体の状態だけでなく、性格や症状との向き合い方によって、あえてセルフケアを提案しないこともあります
  • 「治すための宿題」ではなく、その人の回復を支える選択肢の一つとしてセルフケアを考えています

はじめに

「施術を受けていれば、自分では何もしなくてもいいですか?」

これは、患者さんからよく聞かれる質問の一つです。

結論から言えば、私はセルフケアは基本的には「やった方が良い」と考えています。

施術を受けている時間よりも、仕事や家事、育児、運動など、普段の生活を送っている時間の方が圧倒的に長いからです。

ただし、

「全員が必ずセルフケアをしなければならない」

「セルフケアをしなければ良くならない」

とまでは、現在は考えていません。

実は私自身、以前はセルフケアを今よりもかなり重視し、「必ずやってください」と患者さんへ強くお伝えしていた時期がありました。

しかし約20年臨床を続ける中で、セルフケアとの付き合い方も、その人の身体の状態や性格、症状との向き合い方によって変えた方がよいと考えるようになりました。

今回は、当院が現在セルフケアをどのように考え、どのような基準で患者さんへ提案しているのかをお話しします。

セルフケアは、基本的にはやった方がいい

まず大前提として、セルフケアそのものを否定しているわけではありません。

多くの場合においてやった方が良いと考えています。

理由はシンプルで、施術を受けている時間よりも、普段の生活をしている時間の方がはるかに長いからです。

施術を受けた後も、仕事をしたり、家事や育児をしたり、長時間座ったり、運動したりと、いつもの生活へ戻ります。

特に施術を始めたばかりの時期は、施術によって身体に変化が見られても、日常生活を送る中で以前の状態へ近づいていくことがあります。

そのため、自宅で身体を動かしたり、必要なケアを取り入れたりすることが、施術後に確認できた変化を保ちやすくする助けになることがあります。

私はセルフケアのことを患者さんに、よく「塾」に例えて説明します。

施術が「塾の授業」だとすれば、セルフケアは「家庭学習」です。

塾の授業だけでも成績が伸びる人はいるでしょう。

しかし、授業で教わったことを自宅でも復習した方が、一般的には学習した内容を身につけやすくなります。

「施術を受けたから、あとは全部お任せ」というよりも、普段の生活の中で自分でできることを少し取り入れる。

その方が良いと考えるケースは多くあります。

ただし、一律のセルフケアは出しません

では、腰痛ならこのストレッチ、肩こりならこの運動、と症状ごとにセルフケアを決めればよいのでしょうか。

私はそうは考えていません。

同じ「腰痛」という訴えでも、

  • 身体のどこが硬いのか。
  • どの動きがしにくいのか。
  • 反った方が良いのか丸めた方が良いのか。
  • 左右でどのような違いがあるのか。
  • 普段どこに負担が集中しているのか。
  • 仕事や運動などでどのような身体の使い方をしているのか。

こうしたことは人によって違います。

そのため、症状名だけを見て全員に同じセルフケアを出すことはしていません。

また、初回の段階では「この方には、このセルフケアが必要だ」とまだ判断できないこともあります。

その場合は、何かを渡すこと自体を目的にして、無理にセルフケアを提案することはありません。

施術を重ねながら身体の反応や経過を確認し、

「この動きを取り入れた方がよさそうだ」

「この部分はご自身でも動かしてもらった方がよさそうだ」

と見えてきた段階で提案することもあります。

セルフケアは、たくさん出せば良いわけではありません。

その人に必要なものを、必要なタイミングで提案することの方が大切だと考えています。

闇雲にストレッチすればいいわけではありません

「セルフケア」と聞くと、ストレッチを思い浮かべる方も多いと思います。

しかし、セルフケア=ストレッチではありません。

身体を動かすことかもしれませんし、長時間同じ姿勢を続けないことかもしれません。

運動を取り入れることが必要な場合もあれば、反対に負担がかかっている運動を一時的に減らすことが必要な場合もあります。

休息や睡眠、栄養をしっかり取ることも、広い意味では身体の状態を整えるために大切な行動です。

また、ストレッチそのものも、無条件にやれば良いとは考えていません。

身体が硬いからといって、硬いところをひたすら伸ばせば良いとは限りませんし、身体の状態によっては闇雲に伸ばし続けることが合わない場合もあります。

特に腰痛があるときのストレッチについては、行ってよい場合と慎重に考えた方がよい場合があります。詳しくは「腰痛のストレッチはしていい?整体院が施術判断で見ているポイント」で、当院の判断基準をお伝えしています。

大切なのは、

「セルフケアをやっているかどうか」

ではなく、

「今の自分に合ったセルフケアを選べているか」

ということです。

あえてセルフケアを提案しないこともあります

ここは、私が以前と比べて考え方が変わった部分の一つです。

患者さんの中には、自分の身体と非常に真剣に向き合っている方がいます。

それ自体は決して悪いことではありません。

ところが、真面目に取り組むあまり、身体の小さな変化まで四六時中気にするようになってしまうことがあります。

例えば、

「ここは何ミリくらい伸ばせばいいですか?」

「この角度で合っていますか?」

「これをやった後に少し違和感が出たのですが大丈夫ですか?」

「別のストレッチも追加した方がいいですか?」

と、セルフケアそのものが新たな心配事になってしまうようなケースです。

こうした方に、さらに細かなセルフケアをいくつも提案すると、身体のことを考える時間がますます増えてしまうことがあります。

身体の小さな変化をすべて『悪化』と捉えてしまうと、それ自体が不安につながることがあります。当院が一度の痛みだけで判断せず、症状の頻度や持続時間、経過を見ている理由については、「一瞬だけ痛かった…これは悪化?当院が『続く痛み』を重視する理由」でもお話ししています。

そのような場合には、私はあえて細かなセルフケアを出さないこともあります。

むしろ、

  • 好きなことをする。
  • 趣味を楽しむ。
  • 気分転換をする。
  • 身体のことを考えない時間をつくる。

そういったことをお勧めする場合もあります。

セルフケアは、本来その人の身体を良い方向へ導くために行うものです。

それが大きなストレスや不安の材料になっているのであれば、「もっとやる」ことだけが正解ではないと私は考えています。

昔は「必ずやってください」と言っていました

これは、私自身のセルフケアに対する考え方が変わってきた部分です。

以前の私は、今よりもセルフケア指導をかなり重視していました。

患者さんにセルフケアを細かく説明し、

「必ずやってください」

「これをやらないと良くなりませんよ」

という伝え方をしていた時期もあります。

セルフケア指導そのものにも、かなり時間をかけていました。

もちろん、それは患者さんに良くなってほしいと思っていたからです。

セルフケアをきちんと行うことが、回復のために重要だと強く考えていましたし、そのセルフケアを徹底的に患者さんにお伝えしていくことが当院の強みとさえ思っていました。

しかし臨床経験を重ねていく中で、それがすべての患者さんにとって良い伝え方とは限らないと感じるようになりました。

特に真面目な方ほど、

「先生に言われたから、毎日ちゃんとやらなければ」

「今日はできなかった」

「やらなかったから、また痛くなったのではないか」

と、セルフケアそのものがプレッシャーになってしまうことがあります。

今振り返ると、セルフケアの重要性を伝えたいという思いが強すぎるあまり、かえって患者さんを不安にさせていた部分もあったと思います。

だからといって、「セルフケアは必要ない」という考えに変わったわけではありません。

むしろ、セルフケアは今でも大切だと思っています。

変わったのは、

「何をやってもらうか」だけではなく、

「その人にとってセルフケアがどのような意味を持っているのか」

まで考えるようになったことです。

今は「治すための宿題」ではなく「回復を支える選択肢」

現在の私は、以前よりも身体そのものが持っている回復する力を信頼するようになりました。

施術でできることを行い、身体が回復していきやすい状態をつくる。

そのうえでセルフケアを、

「これをやらなければ治らない宿題」

ではなく、

「回復を支えるために自分でできることの一つ」

として考えています。

もちろん、多くの場合はセルフケアをやった方が良いと思います。

ただし、全員が同じことをする必要はありません。

初回から必ず何かを始める必要もありません。

そして、セルフケアをすること自体が大きなストレスになっているのであれば、その人にとって本当に必要なのかを一度考え直してもよいと思います。

その人の身体の状態を確認し、その人に合った内容を、必要なタイミングで、無理のない範囲で取り入れる。

場合によっては、あえて何もしない時間をつくる。

これが現在の私のセルフケアに対する基本的なスタンスです。

セルフケアは、やるに越したことはない。

でも、無条件ではない。

大切なのは「セルフケアをやったかどうか」ではなく、その人が回復しやすい状態をつくるために、今何が必要なのかを考えることだと思っています。

文責及び施術担当者:アルテカイロプラクティック院長 前田彰(院長プロフィールはこちら)

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