この記事でお伝えしたいこと
- ストレッチは有効なセルフケアの一つですが、強く・長く伸ばせば良いとは限りません
- 筋肉には伸びるだけでなく縮む働きもあり、状態によっては「伸ばさない」判断をすることもあります
- 症状名だけで一律に決めず、その時の身体に何が必要なのかを確認することが大切です
はじめに
ストレッチはセルフケアの基本です。
硬くなった筋肉を適切に伸ばすという意味では、もちろん有効な方法の一つだと考えています。
ただし、
「身体が硬いなら、とにかく伸ばせばいい」
「ストレッチなら、やればやるほど身体に良い」
とは考えていません。
人間の身体は生き物です。
物のように、グイグイ引っ張ればそのまま柔らかくなるわけではないどころか、むしろ硬くなることさえあります。
また、同じ「身体が硬い」「腰が痛い」「首がつらい」という訴えでも、その人に必要なことが同じとは限りません。
今回は、当院がストレッチをどのように考え、どのような場合に勧め、逆に控えていただくことがあるのかをお話しします。
ストレッチはセルフケアの基本
まず大前提として、私はストレッチそのものを否定しているわけではありません。
硬くなった筋肉を、適切な強さ・方法で伸ばすことには意味があります。
特別な器具がなくてもできるものが多く、自宅で続けやすいセルフケアの一つでもあります。
前回の記事でもお話ししたように、施術を受けている時間よりも、普段の生活をしている時間の方が圧倒的に長いため、自分でできるケアを生活の中に取り入れることには価値があります。
セルフケアそのものに対する当院の考え方については、「セルフケアは必要?施術を受けていれば何もしなくていい?」で詳しくお話ししています。
ただし、そこで大切なのは、
「ストレッチをするか、しないか」
だけではありません。
- 何を伸ばすのか。
- どのくらいの強さで行うのか。
- どのタイミングで行うのか。
- そして、そもそも今の身体に「伸ばすこと」が必要なのか。
そこまで考える必要があります。
人間の身体はゴムと同じではありません
患者さんへの説明で、私はよくゴムを例に出します。
ゴムであれば、引っ張ればその分だけ伸びます。
しかし、筋肉は生きた組織です。
強く引っ張れば引っ張るほど、単純に柔らかくなっていくわけではありません。
刺激が強すぎれば、かえって痛みや緊張感が出ることもあります。
それなのに、
「まだ硬いから、もっと強く」
「もっと長く伸ばした方が柔らかくなるはず」
と続けてしまうと、その人の身体にとって必要な刺激の範囲を超えてしまうことがあります。
ストレッチは、強ければ強いほど良いものではありません。
弱ければ良いというものでもありません。
その人の身体に合わせた「ちょうど良い塩梅」があると考えています。
筋肉は「伸びる」だけではなく「縮む」
もう一つ、ストレッチを考えるうえで大切にしていることがあります。
筋肉は、伸ばされるだけの組織ではないということです。
縮むというもう一方の大切な働きがあります。
身体をスムーズに動かすためには、必要な場面で筋肉が伸び、必要な場面では縮むことの両方が必要です。
ところがセルフケアになると、
「硬い=伸ばす」
という考え方だけになってしまうことがあります。
私は必ずしもそうではないと考えています。
状態によっては、伸ばすことを繰り返すよりも、むしろその筋肉を縮める方向へ身体を動かした方が合うこともあります。
大切なのは「硬い筋肉を見つけて伸ばすこと」ではなく、その筋肉が身体の中でどのように使われているのかを見ることです。
首の後ろを「もっと伸ばす」が合わない人もいます
その一例が、首の後ろ側です。
首や肩がつらいと、頭を前へ倒して首の後ろ側をグーッと伸ばすストレッチをしている方は多いです。
実際、そのようなストレッチを勧められた経験がある方も多いと思います。
もちろん、そのストレッチ自体が悪いわけではありません。
問題は、その方の身体に合っているかどうかです。
例えば、普段から頭が前方に突き出すような姿勢が続いている場合、首の後ろ側の筋肉は日常的に引き伸ばされた状態になっていることがあります。
そこへさらに強く伸ばす刺激を繰り返すことが、その方にとって最適とは限りません。
そのため当院では身体の状態を確認したうえで、あえて首の後ろ側の筋肉を縮める方向へ動かす運動を提案することもあります。
実際に、首の後ろを強く伸ばすストレッチを続けていた患者さんに対して、逆にその筋肉を縮める方向の運動を提案したところ、症状が楽になっていったケースもありました。
首肩のつらさに対する実際の施術例については、「30代 女性 ストレートネックからくる首肩の強いダルさと痛み」もご紹介しています。
もちろん、これは全ての方に当てはまるわけではありません。
「首がつらいから首を伸ばす」
「筋肉が硬いから、とにかくストレッチする」
と一律に考えないことが大切です。
首のつらさについて、当院が身体全体をどのように確認しながら施術しているのかは、「首こり」の症状ページでも詳しくご紹介しています。
炎症が強く疑われる時期は、無理に伸ばさない
もう一つ、ストレッチを控えていただく代表的な場面が、炎症が強く疑われる時期です。
当院ではこのような時期には、患部へ無理な刺激を加えないことを基本に考えています。
特に、じっとしていてもズキズキするような痛みがあるときに、
「早く良くしたいから」
「動かさないと硬くなりそうだから」
と、痛みを我慢しながらストレッチを繰り返すことは勧めていません。
もちろん、痛みがあるから身体をまったく動かしてはいけない、という意味ではありません。
身体の状態を確認したうえで、動かせるところを動かしたり、患部とは別の場所から施術したりすることもあります。
ただ、炎症が強く疑われる場所そのものへ無理な刺激を繰り返すより、まずは刺激を減らして状態が落ち着くのを待つ。
これが当院の基本的な考え方です。
「痛い=ストレッチした方がいい」とは限りません。
「腰痛にはこのストレッチ」と一律に決めない理由/まとめ
動画サイトやSNSを見ると、
「腰痛にはこのストレッチ」
「肩こりにはこの運動」
といった情報をたくさん見かけます。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
実際にその方法が合う方もいるでしょう。
ただ、動画を見ている人の身体の状態を、動画を配信している側から確認することはできません。
同じ腰痛でも、伸ばした方が良い人もいれば、別の動きを取り入れた方が良い人もいます。
今は強い刺激を控えた方が良い人もいます。
それを確認せず、「腰痛」という症状名だけで一律にセルフケアを決めることに、私は以前から慎重です。
私自身、20年近い施術経験の中でセルフケア動画の依頼を数多く受けましたが、「腰痛にはこれ」という形のセルフケア動画を出してこなかった理由の一つがここにあります。
その方に合ったストレッチやセルフケアを見極めるところまで含めて、治療家の仕事だと考えているからです。
ストレッチはセルフケアの基本であり、適切に行えば身体にとって役立つ方法の一つです。
しかし、
- 「硬いから伸ばす」
- 「痛いからストレッチする」
- 「たくさんやれば柔らかくなる」
とは限りません。
筋肉は伸びるだけでなく、縮むことも必要です。
その時の身体の状態によっては、ストレッチよりも別の動きが合うこともあれば、無理な刺激を加えず状態が落ち着くのを待った方が良いこともあります。
大切なのは、「ストレッチをすること」そのものではありません。
その方の身体に、今何が必要なのかを考えることです。
当院では症状名だけで一律にセルフケアを決めるのではなく、身体の状態や反応を確認したうえで、その方に合った方法を提案することを大切にしています。
文責及び施術担当者:アルテカイロプラクティック院長 前田彰(院長プロフィールはこちら)
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